第5章 glass heart【赤葦京治】
遥と付き合い始めてからは、あっという間に季節が駆け抜けた気がする。
俺たちが恋人同士になって一年が過ぎ、季節は夏を迎えた。
その夜は遥の家で夕食を食べて、一緒にDVD観賞をして過ごしていた。
エアコンで冷やした快適な空間の中で、並んでテレビに目を向ける。
ぽつりぽつりと会話しながら、映画の世界に没頭すること約二時間。
物語は結末のシーンを映しエンドロールが流れ始める。
現実世界に戻ってきたと同時に、俺はテーブルに置かれたままのアイスコーヒーを飲み干した。
氷が溶けきってしまい、酷く水っぽい。
「何か一作目の方が面白かったなぁ…」
「そうだね。こっちが悪いって訳じゃないけど」
話題作の続編がイマイチなのは、珍しいことではない。
けれどこの映画の続きを楽しみにしていた遥は、ガッカリしたようにテレビを消した。
「そろそろ帰るよ」
明日は早朝から仕事のため、映画を見終わったら早めに帰るつもりでいた。
空のグラスを持ち立ち上がる。
「あ、ねぇ京治。夏休み、また旅行しよ?」
「いいよ。でも今年は泊まりは無理かな…」
「うそぉ…そうなの?」
付き合ってからは纏まった休みのたびに泊まりで出掛けていたけれど、この夏は難しそうだ。
「日帰りじゃダメ?」
「うん。じゃあ、いつならいい?」
声を弾ませる遥を横目に手帳を開き、休みの日付を確認する。
「ここは木兎さんたちとバーベキューだから…その前後なら大丈夫かな」
「え?じゃあそのバーベキュー行かなければ一泊できるってこと?」
「まあ…そうだね」
「えー?断れないの?」
不満そうに口を尖らせる遥。
木兎さんも黒尾さんたちも、バレーに仕事に忙しい。
ただでさえ予定を組むのは難しいのに、今回のバーベキューに関しては俺の都合を聞いてもらった。
その上でキャンセルなんて、いくらなんでも失礼だ。
「ごめん…。みんな俺の休みに合わせてくれたんだ。だから、断れない」
「…そうなの」
「旅行できない訳じゃないだろ?」
「うん」
「秋の連休はちゃんと空けとく」
「…ほんと?」
「うん」
少し不満そうにしながらも、遥は納得してくれた。
何だか悪いことをした気がする。