第2章 この腕の中の君 ※【黒尾鉄朗 続編】
何だか思いのほか楽しい。
一度チラッと会っただけのユメちゃんだけど、こんなの似合うかな?喜んでくれるかな?って想像すると、ワクワクしてくる。
「……ねぇ、優くん」
「はい?」
「こうして女の子の洋服選ぶのって、どう?」
「え?」
何か変な聞き方しちゃったかな…。
でも、優くんの口から出てくる返事は、もしかしたらお父さんが感じていた思いかもしれない。
そんなことを考えてたら、思わず言葉にしてしまっていたのだ。
優くんは不思議そうに私を見たあと、ふわっと笑った。
作ったような笑顔でも、色気を漂わせた笑顔でもなくて、綻んだ目元に口元。
自然に出てきたものだとわかる。
「楽しいに決まってますよ。こんなの着たら可愛いだろうなって想像するの、楽しいです」
「……」
「あ、こういうの叔父バカって言うのかな」
はにかんだ笑顔に変えて、優くんは私から目を逸らした。
ううん…
そんなことないよ。
何だか今、嬉しい。
もちろん優くんのはユメちゃんに向けられた言葉なんだけど…。
お父さんももしかしたら、優くんみたいに思ってくれてたのかも。
そんな風に考えても…いいかな…?
「優しいね、優くんは。名前のまんま」
「……」
「んー、チェックのスカートないね。ねぇ、上の階にも少しだけ子供服あったよ。せっかくだし、見に行こうよ」
「え?はい…いいんですか?」
「もちろん」
妥協じゃなくて、ユメちゃんに似合いそうなコレって一着を選びたい。
私たちはまたエレベーターに乗り、目的の店へと向かった。