第2章 この腕の中の君 ※【黒尾鉄朗 続編】
*夢主side*
「武田さん、お疲れさま。気をつけてねー」
「お疲れさまでした」
お客さんの出入りも多かった金曜日の閉店後。
片付けと明日の仕込みを済ませて、ようやく今日の業務が終わる。
いそいそと帰り支度を済ませた私は、南さんに挨拶をして店の出入口へと向かった。
"彼"にはさっき、連絡を入れた。
これから最寄り駅まで迎えに来てくれることになっている。
ああ…ちょっと緊張する…。
「あれ?武田さん、何か荷物多いね」
「……」
南さん……目ざといです……。
「あー……ちょっと……」
「もしかして、お泊まり!?武田さん彼氏できたの!?」
「……はい」
「そっかそっかぁ!今度店にも連れてきてよ!」
「……はい」
もう何度も会ってますよ…南さん。
一緒にバレーまでしてるんですよ?
その"彼氏"がてっちゃんだとは言えないまま、足早に駅へと向かう。
いつも利用する電車ではなく、今日はその反対方向へ進む電車に乗るべくホームへ降り立った。
ここから三駅先が、てっちゃんちの最寄駅。
今夜は初めて、彼の家にお邪魔する。
会えるのが嬉しいのは当然のこと。
でも、電車に揺られながらもなんだかそわそわして落ち着かない。
メイク直したけど、おかしくないかな。
髪、ボサボサじゃない?
てっちゃんの部屋ってどんな感じだろう。
あれこれ考えを巡らせていたら、三駅分の距離なんてすぐ。
初めて降りる駅の、改札を出てすぐの場所。
遊歩道のガードレールに腰を預けて、彼は待っていた。