第10章 スイートセンチメンタル …3月14日
さらりと頬をなでた、季節外れの暖かで穏やかな春風
眠い……
鼻腔を数多の花々の香りがすり抜け、
小さく呻いて億劫に瞳を開けた。
「うぅ」
ここの楽園を照らす偽物の太陽が眩しくて、くらんだ私は目を閉じた。
「大丈夫かい?」
淡くとろけるようなテノールが耳に入り、私はそっちを振り向いた。
首を曲げる前に、彼が回り込んで日光を遮ってくれた。
や、やっぱりさりげなく優しいというか、なんというか。
「三島幹部〜……?」
「そうだとも」
甘やかに微笑んだ彼が私に手を差し出し、それを受け取って立ち上がる。
「お茶を淹れたよ。
あと、君の持ってきてくれた差し入れのケーキも用意した。」
要点だけを伝えた三島幹部の手が離れてゆく。
暖かな春の陽気に脳は絶賛休業中だ……
「上橋?」
「あっ、はい!」
先をゆくその背を追いかけた。
ふわふわとミルクティー色の髪が揺れている。
さ、触りたい……って! 私!