第5章 SSS キャラ×男主:漫画作品篇(―/2日更新)
★GK尾形百之助(同衾主続き)
「名前」
「っ!」
スマホにイヤホンを刺して動画を見る時は決まってソファに座らずローテーブルとの隙間へ座り込む。それが仇となったのはカミングアウトから三日後のこと。知らぬ間に……というか何故わざわざと思うけど、俺の真後ろに尾形が座ったらしく、休憩をしようとイヤホンを外したタイミングで急にバックハグをかまされた。
嫌にねちっこい動作で肩周りをじっくりと抱き締められながら囁かれては、目が白黒するのも当然だと思う。たかが自分の名前なのに尾形の低い声で紡がれると、脳に直接吹き込まれたみたいで何となく気持ち悪かった。
「な、なん、っ、めちゃくちゃ吃驚した……っ」
「生娘かよ」
「生娘とか関係なくないですかっ」
「ハハァ」
「あんたねぇっ……」
勢いに任せて尾形を見上げると、色気のある端正な顔立ちが優しく甘く煮ほどけていて面食らう。熱を孕んだ眼差しが俺を射下ろして、捉えて離さない。俺も馬鹿じゃないので雰囲気から察した。
「接吻したことあるんだろ」
「あ、当たり前ですよ」
「尻を使った事は?」
「……」
「この場合のだんまりは肯定と取るぜ」
「っ……だったらなんですか!」
やけくそになって吠えれば、火照ってきた耳に尾形の細い息が吹きかけられて、彼の腕の中で馬鹿みたいに全身が跳ね上がった。くつくつとした嘲笑が内耳まで侵す。
「今後は死守するんだな。いつか『旦那様』が貰ってやる」
「……からかいやがって」
「ハハァ」
★GK杉元佐一(同衾主続き)
「――アシㇼパさんがその時さぁ」
「うんうん」
アシㇼパさんの事を語る杉元のなんと晴れやかな事か。心の底から愛して尊敬している姿に胸の内が温かくなる。彼女の中に正気を見出して自身を保っているのかもしれないけれど、深層心理がそうであったって彼の敬う気持ちに偽りはない。彼に足りないものを確実に補うアシㇼパさんの存在には、杉元ファンとして感謝してもしきれないだろう。
「――それでね、白石がさ」
「……」
しかしふと『ならば今の杉元は?』と思ってしまったのだ。アシㇼパさんが傍に居ない、この杉元は秩序が欠けた不完全な男なのだろうかと。楽しそうに幸せそうに安心しきったように語り続ける杉元は、果たして今の生活で己を見失い続けているのだろうか。
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