第27章 黄の心
「・・・大丈夫ッスか?」
『うん、・・・ありがと』
「お安い御用ッスよーっ」
気が済むまで泣いたのか、目が真っ赤になっている。
涙も少し溜まってる。
「・・・いっぱい泣いたんスね」
『うっ・・・ごめん』
謝ることなんか何もないのに。
俺ははちっちが理解をする前に涙を舐めとった。
案の定、呆気にとられているはちっち。
「───これだけ、許して。・・・ね?」
口の中がまだしょっぱい。
はちっちの涙の味だった。
こんなことしてるってバレたら、キャプテンに怒られるッスね
なんだか急に気恥ずかしくなって、強引にはちっちの手を握って歩き出した。
ああ、
俺ヤバイ。
───今、めちゃくちゃ顔赤いかも
『・・・涼太ー』
「なんスか?」
『顔赤いよー』
「なっ・・・!」
ニヤニヤと顔を緩ませるはちっちを見てさらに熱がこもっていく。
むっとして、はちっちの頬を横に引っ張る。
『いだだだだ!ちょ、ヤメテ!』
「お仕置きッス!はちっち!
俺をからかったらこうなるんスよ!」
『わかっ、わかったから!
放して放して!』
手を握ってまでお願いされるから、仕方なく放してあげる。
『ごめんってばー』
「まぁ、許してあげるッスよ?」
『なにその上から目線ー』
「・・・またやられたいんスかね?」
慌てて否定しているはちっちの姿に頬が緩む。
ツボがくすぐられるように、笑顔になっていく。
はちっちに握られた手はまだ、あたたかい。
───うん、それだけでいい
そのあたたかさで、前に進める。