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黒執事:短編

第7章 小さな願い


初めてセバスチャンと話してから3ヶ月が経った今日、病院へ検査に行った。
どうやら、私はもう長くは無いらしい。

『私、死んじゃうんだって』
「…そうですか」

セバスチャンはあれから、ほとんど毎日と言っていい程、私の部屋を訪れていた。
そして今日も…。
私の言葉に、セバスチャンは静かに瞼を伏せた。

「怖いですか?」
『え…?』

セバスチャンはそっと私の頬を撫でた。
何度も何度も、手袋越しの熱が頬を行き来する。
それでやっとセバスチャンは私の涙を拭っているのだと分かった。

『分からない。でも、怖いのとは違うと思う』
「では、なんですか?」

私が無意識に流すこの涙は、恐怖ではない。
絶望でも、悲しみでも、怒りでもない。
これは、きっと…

『嬉し涙だと思う』

私の言葉に、セバスチャンを目を見開いた。
よほど驚いたのか、頬を撫でていた手もピタリと止まる。

『私ね、毎日退屈だったの。ベッドから眺める変わらぬ町並みだけを記憶に死ぬのかぁって…でもね』

頬に添えられたセバスチャンの手を取り、ぎゅっと握りしめる。

『セバスチャンに会えたから。それに、こうやって話が出来て、私は幸せだったよ。ありがとう』
「名無しさん…」
『ありがとう……っほん、と、にっ、ありがと、う』

止まらない涙は、握りしめたセバスチャンの手を包む手袋に幾つものシミを残す。

「名無しさん…」

セバスチャンの声に顔を上げた。
少し困ったように笑うセバスチャン。

『ごっ、ごめんなさいっ!私ったら…』
慌てて涙を拭った。

『ねぇ、セバスチャン』
「なんですか?」
『お願いがあるの。聞いて、くれる?』
「フフ…何なりとお申し付けください、名無しお嬢様』

優しく微笑むセバスチャン。
私の願いはね…

to be continued?
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