【ONE PIECE】アイサレたくない恋【サッチ】
第2章 Customer➤Family
「おっ綺麗なお嬢ちゃんじゃねぇの。お嬢ちゃんって歳でもねぇか…?な、一杯付き合ってくんね?」
「仕事中でーす」
「いーじゃんいーじゃん」
酔っ払った相手を上手くあしらうスキルはまだなかった。
いつもなら海賊船が停泊してる時は表に出さないのに。
苦笑しているところを見ると、あまり悪い人ではないのか、知り合いかなにかだろうか。
「マスター、ちょっとくれぇいいだろ?」
「程々にしてくれよ、俺の可愛い娘なんだからな」
「えへへ」
「おう。さ、お嬢ちゃん、俺はサッチ。お嬢ちゃんは?」
「なまえ!」
「なまえちゃんね」
よしよしと頭を撫でてくれるところがマスターに似ていて、ちょっと親近感がわいてしまった。
輝く笑顔に惹かれてしまいそうな気がして、慌てて脳内をリセットする。
「おにーさん、これ食べていい?」
「好きなだけ食え食え。パスタ好きなのか?」
「大好き!」
「味は?」
「特にないけど…強いていえばクリーム系かな」
「よし、じゃあ今度とっておきのクリームパスタ食わせてやるよ」
酔いのまわった海賊の口約束なんて宛にならないのに、真っ直ぐな瞳で見つめられて、どこかで期待する自分がいた。
思考を強制的に変更し、咀嚼しながら目の前の男を観察する。
リーゼント、白い服、黄色のスカーフ。
…何で髪は茶色なのに髭は黒いんだろう。
「失礼な事聞いちまうが、お嬢ちゃん一体いくつだ?あんまり若いようには見えねぇが…」
「ひーみつー」
「あらら」
「おにーさんは?」
「ひーみつー」
「む」
口調まで真似されて、しかもそれがすごい鼻にかけた声で、私そんな言い方してないのに。
癪に障ったから奴の目の前の肉をフォークで刺して奪ってやった。
それでも笑っているのでその豪快に開けた口に容赦なくぶち込む。
思わぬ奇襲にむせ返ったおにーさんの前に水の入ったコップを置いたマスターは笑いながら程々にな、と私に言った。
「はぁい」
「お嬢ちゃん…なかなかえげつないことするなぁ」
「可愛い仕返しでしょ?」
「どこが…」
「ところでおにーさん、何て海賊団なの?」
「ハッハッハッ、聞いて驚け、白ひげ海賊団四番隊隊長だ!」