Volleyball Boys 2《ハイキュー!!》
第18章 "好き"の行方は知らぬまま、
無事に胃袋に食料を収めた3人は、ひたすら机に向かっている。星菜の部屋でなくリビングに居るのは、クーラーガンガンだから。時計の短針は、間も無く午後2時を示すところで、外からは喧しいセミ達の大合唱が聞こえるばかりである。
そんな時、ポツリと孤爪が呟いた。
「アイス食べたい………」
その言葉にピクンと耳を反応させた灰羽。向かいの席で復習を進める星菜の手を、ツンツンとつつく。なぁに?と首を傾げた星菜に、灰羽は狙いを定めた。今回のミッションは、"おやつのアイスを獲得せよ"だ。クロさんと研磨さんのためにも、灰羽リエーフ出陣しますッ!
「星菜、俺、頑張ってると思わない?」
『まぁ、うん、そうだね』
「おやつにアイス、食べたいなぁ?」
((リエーフ、ナイスぅ―――ッ!!))
星菜のペンを持つ右手をそっと両手で包み込みながら、灰羽は整ったハーフ顔に笑みを湛える。大体の女子はコレでイチコロなのだろうが、悲しいかな、日頃から黒尾と灰羽に似たような事をされている星菜には全く通用しなかったのだ。
ぱちぱちと数回瞬きをし、目を問題集に戻し、星菜は短く『そうだね』とだけ返した。
それを肯定と受け取り、内心でガッツポーズする黒尾と孤爪。ただその胸中は、"おいリエーフ何手ェ握ってんだコノヤロウ"と"アイス食べたい食べたい食べt"がないまぜになっているだろうが。
不意に、星菜が灰羽の手をキュ、と握り返した。「えっ」と声を漏らした灰羽に、星菜は微笑を浮かべた。ヤバい。ヤバいヤバいどうしよう星菜の手が俺の手を握り返してるよあぁもう今死ねる。1人悶絶する灰羽だったが、次の瞬間、
『そうだね、じゃあ今日中にぜーんぶ終わったら、明日のおやつにアイスあげるよ?』
「「「え???」」」
3人の疑問符が重なった。
『ほら、今日中に終わんないよ〜』
にこにこと笑い、『は・や・く』と急かすように手を叩く星菜。
(星菜、鬼だろ………)
(クロさん、俺にはツノが見えます)
(小悪魔、ってかただの悪魔だよね)
必死にペンを走らせる3人は、星菜の笑みに戦慄したとかしなかったとか。