第41章 伊達眼鏡 上
萎絵田
「それやったら冷凍庫から冷凍苺持ってきな!!」
山崎
「は、はい」
(感じ悪い人だなこの人は…)
俺は藤木さんから教えてもらいながら、
紫の粉末を少しずつ入れて練っていく。
(にしてもこんな地味な作業中に入れる紫の粉末なんぞ…
客は絶対に気付かんだろうし….
誰がこの粉の噂を流したのだろうか…
考えられるのは店長、藤木さん、萎絵田さん…
紫の粉をこの店に売った何者かだ…)
藤木
「お兄ちゃん!なかなか上手いじゃないか!!練りは終わりよ。」
山崎
「ふぅ…………」
萎絵田
「ほらっ!休む暇なんてないんだよっ!!さっさと冷凍庫から…」
山崎
「苺ですね。」
俺は業務用の冷凍庫に入る
(苺…苺……あ、あった!!冷凍の苺って初めて見たかも……っか寒ッ!)
冷凍苺が入っている箱を抱えると、
作業室に戻る。
萎絵田
「ほら、早く持ってきな!!」
山崎
「は、はいっ!!」
!!!
(あれ!!?ま、前が!!!視界が真っ白に!!!)
山崎
「あっ!え?ちょっ…」
アタフタしてると、
手に持っていた箱を誰かが代わりに持ってくれた。
萎絵田
「眼鏡の悲しい定めさ…….かく言う私も冷凍庫に入った後はいつもそんなんでね…
まるで前も後ろも分からない猛吹雪の中を歩いてるみたいな孤独を味わうのは常さ…
アンタも早く慣れなよ。」
山崎
「あ、ありがとうございます…」
(良い人じゃん!?)