第7章 可愛いお前の虜 / 伊達政宗
それからと言うもの。
「秀吉、さっき舞来てなかったか?」
「軍議中だって伝えたら、いつもの茶店で待ってるって言ってたぞ」
「おお、悪いな」
意気揚々と去っていく政宗を見て、秀吉はぽりぽりと頬をかいた。
「なんだ、あれ」
「秀吉さん、どうしました?」
そんな様子に気がついて、家康が声をかける。
「なんか政宗、いつもに増して舞にべったりじゃないか?」
「ああ、最近いつも以上にべったりですよね。 政宗さんの誕生日あたりから、余計に」
「なんかあったのか?」
「さぁ。 それを訊くのは野暮でしょう」
二人して顔を見合わせ『まぁ、仲が良いならいいだろう』と言う結論になった。
「そう言えば、快気祝いやってくれるって?」
「そうなの、信長様が……そんな大したことじゃないのに」
「お前の元気な姿が見れて嬉しいんだろ」
「そうなのかな」
舞はちょっと困り笑いを浮かべる。
政宗の仕事終わると、二人で手を繋いで帰るのが日課になっていた。
(舞が安土の連中に可愛いがられているのは知っているが……)
それが最近政宗の悩みの種になっていた。
もっと自分が世話を焼きたいのに、信長様や、兄貴分の秀吉やらが舞を構うから……
「俺からの快気祝いは何がいい」
「え、いいよ。 政宗にはすごい迷惑かけたし」
「いいから言ってみろ」
「うーん……」
舞は政宗の手をきゅっと握ると、小さな声で言った。
「私は政宗と一緒に居られれば、いい」
その一言に面食らう。
(ああもう、可愛いな)
政宗は、舞を横抱きにした。
「きゃ……っ」
「じゃあ、俺をくれてやる、今すぐ」
「え?」
「閨に直行だな」
その意味を察し、舞は耳まで赤く染まった。
「い、今すぐ?」
「今抱きたくなった、抱かせろ」
あまりの発言に言葉も出ない。
「もう……敵わないなぁ」
そう言って、くすっと笑う。
この笑顔も、可愛い。
何もかも、舞の全てが可愛い。
(毎日毎日愛してやる、お前が飽きる程に)
この後の甘い時間を想像して、政宗は優しく舞の額に口付けを落とすのだった。
終