第39章 ベイビー*ロマンチカ / 豊臣秀吉
「あの、舞……」
「何……?」
「飯食ったら……少し膝を貸してくれ」
秀吉が少し頬を染めて言うと、舞は少しびっくりしたように目を見開き……
そして、小さく頷いた。
「うん、いいよ……」
(顔、真っ赤だな)
秀吉はくすっと笑って、舞の頬に指を滑らす。
なんだか恥ずかしそうに身じろぐ舞が、愛しくて堪らなかった。
―――…………
風が優しく吹き抜ける。
まだそれは、少し冷たくても……
この膝の温もりがあれば、それすら丁度いい。
(……あれ……?)
秀吉はぼんやりとして、落ちたまぶたを開いた。
ボーッと怠い頭に思考回路を巡らす。
どうやら、舞の膝を借りて横になってから……
気持ち良すぎて眠ってしまったらしい。
(この枕は、気持ち良すぎて困るな……)
思わずそんな事を考えていると。
頭の上から、くすくすと笑い声が聞こえた。
「おはよう、秀吉さん」
可愛らしい声と共に、草花の青い匂いが鼻をつく。
身体と首を動かし、仰向けになると。
こちらを覗き込んで優しく微笑む舞の顔が目に入った。
「……悪い、俺寝てたか?」
「結構ぐっすりと」
「あぁ―……」
(格好悪いとこ、見せちまったな……)
そう思っていると、舞が何やら頭の上で手を動かしているのが見えた。
なんか、花を織り込んでいるような……
鼻についた草花の匂いの正体は、これだったらしい。
「何やってるんだ?」
「花冠を作ってたんだよ」
「花冠?」
「なんか周りにシロツメクサがいっぱい咲いてたから……ほら、出来たっ」
舞が何やら誇らしげに笑う。
身体を起こして見ると、花と茎で綺麗に編み込まれた冠を手に持っていた。
その繊細な作りに、秀吉は思わず感嘆のため息を漏らした。
「へぇ……お前やっぱり器用だな」
「女の子なら小さい頃、みんな作ったはずだよ」
「そーゆーもんか……よく見せてくれ」
舞の手から受け取り、しげしげと見る。
確か、こーゆー花で出来た冠って……
少し考えを巡らせ、秀吉はポンっと舞の頭にそれを被せた。