第4章 家康流、愛する人を甘やかす方法 / 徳川家康
(舞、なんであんたはそんなに可愛いの?)
柔らかそうな髪に、触れて、口付けて。
これでもかって言うほど甘やかしたい。
でも、天の邪鬼な性格が邪魔をするから。
もっともっと素直になれたら。
少しは何か違った世界が、見えるのか……
「家康?!」
突然の訪問者に、舞は驚いた声を上げた。
安土城に住む舞の部屋を訪れるのは久しぶりだ。
恋仲になった今でも、家康と舞は離れ離れに住んでいる。
何故って?
舞は信長様のお気に入り故に、一緒に住むことを許してもらえないからだ。
(あー、今すぐ連れ出して、思いっきり甘やかしたい)
久しぶりに逢えた恋人に、家康は心を踊らせていた。
甘やかしたいと言っても、なかなか連れ出すのも苦難だ。
信長様と、兄貴分の秀吉さんと……
なんでこう、舞の周りには面倒くさいのが多いんだろう。
「わぁ…」
舞が家康が訪ねてくれた事に感激を覚え、小さく歓喜の声を上げた。
(わぁ……って何それ。 馬鹿みたいに可愛いんだけど)
心の中で愛しさを感じ、でもそれを悟られないように、なるべく落ち着きを払った声で家康は言った。
「針子の仕事、結構忙しいの? 城にあまり居ないって秀吉さんが言ってた」
「う、うん、まぁね」
何か取り繕ったような言い方。
家康は少し気になったが、あまり深くは詮索しなかった。