第29章 vanilla 〜蒼き焔の行方〜 / 伊達政宗
「政宗、指輪はめてくれる?」
舞に言われ、政宗は身体を離した。
そして、舞の左手を取ると、甲に静かに口付けを落とし……
そのまま薬指にゆっくり指輪をはめた。
……しかし。
「あれ?」
政宗はしかめっ面になる。
舞の指が細いのか、指輪が大きいのか……
明らかにぶっかぶかである。
舞はそれを見て、ぷっと吹き出した。
「大きいね。 普通こういうの贈る時は、ちゃんと大きさを確かめてから贈るんだよ?」
「……そんなのは知らん」
ものすごく不機嫌な政宗が、やたらと可愛く見えて、舞は涙目になりながら、くすくす笑った。
「お前、笑いすぎだ!」
「政宗……可愛いっ」
「可愛いのはお前だろっ」
「せっかく格好良かったのに」
「くっそー、なんか納得いかない。 もう一回仕切り直しだ」
「はいはい」
舞が幸せそうに笑う。
納得いかない、すごく納得いかない。
でも。
(笑った顔、やっぱり最高に好きだ)
その笑顔は、一生俺が守ってやる。
政宗はそう心に思い、指輪よりもまばゆく輝く愛しい恋人を、堅く抱きしめたのだった。
終