第23章 素直になれない君が好き / 織田信長
翌朝。
城に戻るな否や、秀吉に怒鳴られたのは、言うまでもなく……
「御館様! 舞!」
垂れ目を釣り上げて声を張り上げる秀吉に、信長と舞はゲンナリと頭を抱えた。
「どれだけ心配したか、解ってるんですか!」
どうやら、舞はおろか信長も戻らないと、家臣総動員で、城下中を探し回っていたんだとか。
よく見れば、三成も光秀も……
少し離れた所であくびをしている。
信長は額に手を当て唸ったあと、しれっと秀吉に物申した。
「城に帰ってきたら、あれやこれやで舞と愛し合えぬだろう」
「……は?」
「本当に堅物だな、貴様は。 少しは目を潰れ」
「えーっと、二人はナニをしてたんですか?」
「宿で舞を抱いた。 それだけだが」
「はぁー?!」
舞は真っ赤になって俯く。
秀吉はそんな舞を見て、もう怒鳴る事も出来ず。
ぽりぽりと頭を掻いた。
「舞、行くぞ。 少し天守で休め」
信長が舞の肩を抱き、城の中へと促す。
そんな二人の後ろ姿を見ながら……
秀吉は少し安堵のため息をついた。
「まぁ、焦れったかった二人がくっついたのは……良かったか」
「舞、これから貴様は俺の自室で生活するがよい」
天守に戻る最中、信長が舞に言うと、舞は目を輝かせて信長を見た。
「え…っ、いいんですか」
「貴様から目を離したら、また可愛くない口を叩くようになるかもしれぬからな」
「……なんですか、その理由」
「昨夜の貴様はそれだけ愛らしかったと言う事だ」
「……っ」
真っ赤になって俯く舞の頭のてっぺんに、信長は優しく口付けを落とす。
「まぁ、素直になりたかったらいつでも言え。 直ぐに啼かせてやる」
「……っ、お断りしますっ」
「可愛くない口が出たな、仕置きは足りておらぬか」
「きゃ……っ」
軽々と抱き上げられ、舞は小さく声を上げた。
天守に戻ったら、きっとまた甘い時間が待っている。
信長の胸に抱かれながら、そんな事を思い。
舞は信長に解らないように『愛しています』と、そっと呟いた。
終