第2章 臆病なその奥 甘蜜編/豊臣秀吉
臆病のその奥 甘蜜編。
オマケ
「あっ、んあっ、ん、はぁあっ」
女のよがる声が聞こえ、政宗は襖を開けようとした手を止めた。
思わず、聞き耳を立てると……
「舞…っ、俺の名前を、呼べ」
「秀、吉、さん…っ」
「もっと…っ」
「秀吉、さん、あ、はぁっ、秀吉さん…っ!」
(……しまった、お楽しみの最中だ)
政宗はちょっと苦笑混じりに思った。
いくら信長様からの伝言があるとは言え、流石にここで邪魔をするのは野暮ってもんだ。
(出直すか)
なるべく足音を立てないように、回れ右をする。
男の欲望としては聞いていたいが、惚れた女が他の男に啼かされているのなんて、本当は聞きたくないのが本音。
しかし。
「ああっ、いや、はぁっ、んあっ」
これじゃ、丸聞こえだろ……
女中すら部屋に近づかない理由がよく解った。
「勘弁してくれ……」
その場を立ち去りながら、不覚にも身体が疼いてしまっている自分に腹が立って、思わずため息を漏らした政宗だった。
終