第2章 臆病なその奥 甘蜜編/豊臣秀吉
秀吉の御殿。
秀吉は顔をほころばせながら、湯浴みに行った舞を待っていた。
舞といい感じになった昼。
邪魔が入り、夜にやり直そうと約束した。
久しぶりに舞に触れられる。
それだけで、心が踊った。
簡単な着物に着替え、閨に寝転んで、まだかまだかと舞を待つ。
(あ、そうだ)
たわいもない悪戯を思いつき、たぬき寝入りを決め込む事にした。
「秀吉さん、お待たせ」
少し経つと、静かに襖が開く音がして、舞が帰ってきたようだ。
ぱたぱたと足音がしたかと思うと、すぐ側で止まった気配を感じる。
「秀吉さん、眠っちゃったの?」
ちょっと寂しそうな舞の声。
心惹かれるのをぐっと堪え、そのままたぬき寝入りを決め込む。
すると、温かなぬくもりが胸元に落ちてきた。
「秀吉さん、起きて、秀吉さん」
ぬくもりの正体は、舞の手だったらしい。
そのまま胸元を、ゆさゆさ揺さぶられる。
何度も何度も可愛い声で秀吉を呼ぶ舞。
仕方ない、そろそろ観念してやるか。
俺が我慢出来なくなっただけだけどな。
秀吉は、その胸元の手を握ると、ぐっと自分の方に引き寄せた。
ぽふっと音がして、胸に何かが倒れ込む。
温かな体温。
それを感じて、秀吉はようやく目を開けた。