第24章 甘く冷たい宅急便──悪夢
次の日。
「ん……」
目を覚ますと、赤井さんの顔が間近にあった。
「……にゃーっ!?」
私は思わず大声を出してしまう。
必然的に桂羅兄もこの部屋に来るわけで……。
「……何してるんやあんたらー!!!」
朝っぱらから工藤邸には桂羅兄の怒声が響きましたとさ。ちゃんちゃん。←
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「……あはははは!」
「もう珠希さん!笑い事じゃないですよ!」
「ごめんごめん、でも面白すぎるわよ……ククッ」
「笑い方腹立つ!もぉ!」
車の中。私は迎えに来た珠希さんに先ほどの出来事を話していた。
「まぁまぁ、いい経験だったんじゃない?どうせ今回の映画、恋愛モノだし」
「う……確かにそうだけど」
ていうか、歌手が本業なのに女優になってきてないか?珠希さんにそう言うと、「何てったって藤峰有希子の娘だしね」とさらりと言われた。
「私、二世女優とかゴメンなんだけど……」
「だから苗字は伏せてるでしょ?“瀬里奈”って名前だけにして」
「そうだけど〜……」
そんな話が収束し、私は撮影するスタジオに着くまで一眠りすることにした。
撮影は無事終了、今日はこの後ライブをやって、夕方からCDのお披露目イベント、夜にはバラエティ番組の収録だ。
「カット!──OK、これで終了だよ瀬里奈ちゃん!お疲れー!」
「お、お疲れ様でした〜……」
ヘロヘロになって挨拶をする。
昼間はライブで汗びっしょりのヘトヘトになって、シャワーを浴びてすぐに次の仕事。
「芸能人ってこんな忙しいの……?」
「お疲れ様瀬里奈」
珠希さんに苦笑いで労われ、私は帰りの車内でがっつり眠りこけた。