第21章 密室にいるコナン、謎解きするバーボン
琴音さんが石栗さんを殺害した動機は、サークル仲間だった瓜生さんの敵討ち。
瓜生さんの遺体が運ばれて行った日、琴音さんはふとベランダに出たらしい。すると、下で石栗さんが瓜生さんの遺体があったあたりを必死で雪を掘り返していたのだ。
最初は、『石栗さんは瓜生さんが死んだことを信じられなくて、いるはずのない瓜生さんを見つけようとしているのではないか』と思ったそうだ
が──
「彼が捜していたのは自分が首に巻いていたストール……。それを見つけた彼の笑顔が全てを物語っていたわ……。瓜生君は自分で雪の中に飛び込んだんじゃなく、突き落とされたんだってね……」
石栗さんに落とされる時、思わず瓜生さんが掴んだのだろう。でなきゃ夜中、こっそりあんな物を捜すわけがないから。
石栗さんは多分、雪の中でもがく瓜生さんがヘトヘトになった頃に迎えに行くつもりだったのだろうけど……。2mの新雪が底なし沼のように瓜生さんの体力を急激に奪い、3人が見つけた時にはもう完全に雪に埋れて冷たくなっていたというわけだ。
「でも失敗したわ……。石栗君の昼食を確実にアイスケーキにするために……誰でもいいからちょっと怪我させて別荘に招き、昼食の人数が増えればいいなと思って飛げたラケットだったのに……
まさかそれが子供の頭に当たって……その上、その子の連れが名探偵毛利小五郎だったなんて……」
琴音さんは静かに涙を流した。
「私もはまってたかもしれないわね……もがけばもがく程、破滅へ導く底なし沼に……」
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
帰りの車内。
私はふぁ、とあくびを噛み殺していた。隣ではベルモットと電話をしているらしい安室さんがハンドルを握っている。
やがて電話が終わったらしい安室さんが私の方を見る。
「……何ですか?」
連日の事件と仕事で疲労がたまる一方の私に、安室さんは難しい顔で言った。
「あの江戸川コナンという少年……なかなか手の込んだことをするものだね……」
「は?」
ニヤリ、と笑う彼に私は怪訝な顔をした。
安室さんはまた前に向き直る。
「眠りの小五郎……実に興味深い」
その声と言葉に、私はゾクリと背筋が震えた。
まさか……
眠りの小五郎のトリックがバレてるの……?