第20章 漆黒の特急──ミステリートレイン
「さぁ、その扉を開けてください……。その扉の向こうが貨物車です……」
バーボンは灰原を生きたまま組織に連れ戻すつもりらしい。
まず、爆弾で連結部分を破壊。そしてその貨物車だけを切り離して、止まり次第ヘリでこの列車を追跡している仲間が君を回収するという段取りだそう。もちろん、その間は灰原に気絶をしてもらうが。
「まぁ大丈夫……扉から離れた位置に寝てもらいますので、爆発に巻き込まれる恐れは……」
「大丈夫じゃないみたいよ……」
灰原は荷物にかかっていた布をめくった。
「この貨物車の中……爆弾だらけみたいだし……」
「!?」
「どうやら段取りに手違いがあったようね……」
ベルモットは是が非でも彼女の命を絶ちたいらしい。
バーボンは作戦を変更し、灰原を自分と一緒に来るように促したが──
「悪いけど……断るわ!」
灰原は貨物車の扉をピシャリと閉めた。
バーボンが強硬手段に出ようとした時、誰かが客室側のドアを開けた。
「ベルモットか……悪いが彼女は僕が連れて……」
そう言いかけた時、バーボンの表情が変わった。
彼の足元に落ちてきたのは──
「手榴弾!」
バーボンはそれを投げてきた人物に銃を向けた。
「だ、誰だ!?誰だお前!?」
と、連結部分が爆発した。バーボンは間一髪で8号車に入れたが、灰原は貨物車に取り残されたまま。そして数拍もおかないまま、貨物車本体が爆発した。
スイッチを入れたのはベルモット。
「はい!これでTHE・END……。
安心して……。ちゃんと仲間が連結を破壊した音が聞こえてから貨物車を爆破したから、この車両が脱線することはないわ……」
有希子は窓を開け、「ウソでしょ〜!?」と声を上げていた。