第2章 狂い始めた歯車
和也side(6)
何となく、そんな気がしていたんだ。何でかわかんないけど、こんなふうになるんじゃないかって。
最初におかしいと思ったのは、彼らが僕らの名前を呼んだ時。彼らはすぐに人質を要求し、僕らの名前を言った。僕の頭の中は、人質として呼ばれたことより、何故僕らの名前を知っているのだろう、ということでいっぱいになったくらい不可解なことだからだ。
僕らの名前を知っているということは、僕らについて調べたという何よりの証拠。そしてそれはこの立てこもりが、計画的な犯行だと裏付ける重要な手がかりにもなってしまう_________
翔兄さん譲りの鋭い推理で、僕はこの状況の全てを整理しなおした。そして、新たに一つの疑問が浮かんだ。
何故、ターゲットになったのが僕らだったのだろうか……?
この疑問をもとに考えていくと、僕の頭に一つの仮説が浮かび上がった。それは___________
『兄さん達に対する復讐』
まさか、と思った。信じたくないし、そうでなくてほしいとも思った。けど、警察官をやっている兄さん達に恨みの一つや二つ持つ人はいるはずだから、否定をすることはできなかった。
そして今、その仮説だったことが現実として目の前で起きている。途端に、僕の身体に不安と恐怖が駆け巡った。
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本当に兄さん達は殺されちゃうの?
だとしたら人質となったまぁくんは?
一緒に殺されちゃうの?
残された僕と潤くんはこれからどうしていけばいいの?
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さっきまで冷静に推理をしていた自分が嘘みたいに、冷静でいられなくなった。本当に兄さん達に危害が加わるかも知れない。僕と潤くんを懸命に守ろうとしているまぁくんにさえも、魔の手が及ぼうとしている。
守ろうとしてくれてるのは嬉しい。
けどそれでまぁくんを失ったら……?
翔兄と智兄を失ったら……?
まぁくん、ごめんね。貴方が僕達を必死に守ろうとしてくれているのは痛いほどわかるけど、そんなことして貴方を、兄さん達を失いたくはないから_______
N「まぁくん、彼らの指示に従いませんか?」