第17章 ひねくれ花言葉
次の日、お昼頃に店内に鳴り響いた電電虫の音。
相手は、あのエキゾチックな美人さん。
「今、いいかしら」
「はい、どうぞ」
「オーナーの提案で、『毎日通うように。ただし、花は1日おきでいい』たそうよ。」
命令のような提案に、目をぱちくりとさせてしまう。
そして、了承の意を伝えてから、通話を終えた。
美人さん…いや、クロコダイルの“提案”によると、私は今日、手持ち無沙汰で彼の部屋へ向かう事になる。
歩いて、訪れるのは2度目になる彼の部屋へと向かった。
机の上に近づけば、花瓶には昨日私がいけたのとは別の花。
確か、ラナンキュラスの花言葉は、
『貴方は魅力に満ちている』
だった。
彼がこの花言葉を知っていればいいのに、と思った。
けれど、この花はもしかしたら、美人さんへの、あるいは美人さんから彼への贈り物かもしれない。
ふとそう考えて、苦しくなる。
机の上にはメッセージカード。
見てみると、それはまさかの私宛て。
「花から得る言葉」
…どういう意味だろう。
まさか、本当に彼は花言葉が分かるのだろうか。
「ふふ、その花は気に入ったかしら」
考えていると、突然声がかかって驚いた。
振り向くと、ドアにもたれて立つ美人さん。
「サー…オーナーったら、『花屋の小娘が花言葉も知らなかったらザマァねぇな』なんて言って、貴方の為に用意させたのよ。」
美人さんが、可笑しそうに笑いながら教えてくれた言葉を瞬時に理解して、嬉しくなる。
彼が、私の為に花を用意してくれた。
その事に胸がいっぱいになる。
「私の為、そして、花にメッセージを込めたという事ですか…」
「そうね。…ふふ、花を使った文通なんて、素敵ね」
そう言って部屋をあとにした美人さんの言葉に、今度は顔が熱を帯びるのがわかった。