第17章 ひねくれ花言葉
ガチャリ
扉をあけて、花を落とさないように抱え直して、部屋の中へと入る。
砂漠の国、アラバスタで花屋というのは、とても珍しい。
私が今、花を届けに来たのは、レインディーナーズというカジノの中。
その中でも、一般客が入れない場所。
このカジノのオーナーであるクロコダイルの部屋に、花を届けて欲しい、という、エキゾチックな美人さんの依頼により、私はここにいる。
私の仕事は、クロコダイルの机の上にある花瓶に、毎日花をいけること。
「お花は何にしますか?」
とたずねれば、
「貴方の好きなものでいいわ」
と言われた時は、微笑む美人さんを見て不安になった。
クロコダイルは、この国の英雄と呼ばれている人だから、私に丸投げしても大丈夫なのだろうか。
前から何度か、不機嫌そうに颯爽と歩くクロコダイルを、花屋から見ていた。
黒いコート、大きくてごつごつした手には沢山の指輪。
足が長くて、背も高い。
常に不機嫌そうな表情をはっつけて、ワニのような目で、顔には大きな傷。
はっきり言って、ものすごい悪人面だ。
だけど、私はそんな彼の姿に目を奪われ、心まで奪われていた。