第32章 日向
キバに変化したネジに運ばれながら、後方を探る。
どうやら引っかかってくれたらしく、私達を追う気配をとらえた。
『…ネジさん、成功です。できるだけスピードを上げて下さい。少しでも遠くへ…。』
「ああ、分かっている。」
担がれている私がそんな事言える立場じゃないのは分かっている。
けれど、ヒナタに変化している以上下手な事はできないのだ。
しかし人1人抱えて走るにもスピードには限界がある。
とうとう雲隠れの忍者たちに追いつかれてしまった。
「下忍ごときが、無駄な足掻きを…。
茶番に付き合ってる暇はねーんだよ!」
そう言った忍は一気に私たちの後ろに着く。
しかし、ネジは攻撃を仕掛けられてすぐ、私を投げ捨てた。
(…ネジさん!ちょっと扱い荒いよ!)
そう心なかで文句を言うが、それは直ぐに感嘆の気持ちに変わる。
「八卦六十四掌!!」
ものすごいスピードで相手の点穴を突き、早くも1人を倒してしまった。
残りの1人が「試合に出てた…」と言ってる辺りから、この技を一度何処かで使ったのだろうか。
(ネジさんつっよ…。
白眼ってなんでも透き通して見えるってイメージしかなかったけど、点穴も見えちゃうのね…。
写輪眼はチャクラの色はわかっても、そこまで見えたりしないもん、凄い。)
素直に賛辞を送ったのはいつぶりだろう。
そんな事を思いながら、リクはそのまま丸太に変化した。
気配を殺し、奇襲を仕掛けるようとに雲隠れの忍とネジの戦いを見る為だ。
ネジはヒナタと同じ柔拳使い。
日向一族の白眼、そして鍛えられた柔らかい体があるからこそ、通常の何十倍も柔拳が活きるのだろう。
だが相手は中忍以上。
ネジが柔拳使いと分かれば土遁の術で距離を取り始めた。
戦況は一転、ネジは不利な状況へと追い込まれてしまった。