第32章 日向
「リク。」
『…?なんですか?』
「予選の前、お前は長い事ペラペラと言ってたな。」
一瞬何の事かと思ったけれど、あの意味のわからない説教の事かと気づきリクは渋い顔をする。
『すみません…偉そうに。しかも分かりにくいし…』
「確かにあの時は分からなかったが、うずまきナルト…あいつと戦って、お前の言いたい事がわかった気がする。
今なら、運命…それは変えられると思えるさ。」
『フフッ…そうですか。』
何があったかわからないけれど、ネジの顔を伺うと、初めて会った時よりも清々しい様子だった。
ヒナタの為に…宗家の為に命をかけろ。
確かにあの長老さんは言っていた。
前のネジなら殺意剥き出しだったかもしれないけれど、ナルトと戦う事で心の整理がついたのだろう。
(さすがはナルトくん、将来火影になる男ね。)
ナルトが褒められた事と、ネジが変わった事が両方に嬉しくて、思わず笑顔が溢れた。
「…リク、笑ってる場合じゃないぞ!とまれ!辺りに敵の匂いがする!」
キバの忠告を受けて、私達は足を止める。
どうやらトラップがあるようだ。
私達のチャクラに反応して、発動する仕組みらしい。
土の中から犬のようなものが出てきて、次々と私達に襲いかかる。
「もう!こんなのキリがないじゃない!」
倒しても倒しても復活する。
テンテンと同意だ。
でも、これだけのトラップを仕掛けるなら時間はとったはず。
『…私がここでこいつらとやります。
ネジさんたちはいってください!』
ここは一人で請け負ったほうが、ヒナタ奪還の確率が上がる。
そう踏んでの案だった。
「いーえ!ここは私が受け持つわ!ネジ!行って!」
『テンテンさん…なんで?』
「私が得意なのは、中・遠距離の武器攻撃!私が一番逃げ切る確率は高いわ!」
確かにどちらかというと、私は近距離が得意だ。
テンテンの言う通り…かもしれない。
「リク、ここはテンテンに任せていくぞ。」
『…はい!テンテンさん、お願いします!』
彼女だって強いんだから心配の必要はない。
キバに案内され、またターゲットに向けて走り出した。