Wonderful Life〜素晴らしき日常〜【気象系BL】
第5章 なまリクII♡高齢者さま
店の営業時間も過ぎ、シャッターを閉めようとした時にかかってきた電話。
相手は松岡さんだった。
松岡さんとは、俺がパティシエになるために会社を辞めた後も、頻繁に連絡を取り合っていた。
時間が合えば、仕事終わりの一杯…なんてことも…。
それも毎回松岡さんの奢りで…
でもそれも毎回ともなると、流石に俺も気を使うわけで。
ある時から俺は、店の売れ残ったケーキを二つ、松岡さんにお礼として持って行くようになっていた。
ま、売れ残り…と言っては聞こえが悪いけど、味に問題もないし、賞味期限内だし、後々廃棄することを考えたら、美味しく食べてもらった方が、ケーキだって喜ぶからね。
それに二つ、ってのにもちゃんと理由があって…
松岡さんの口からははっきりと聞いたことは無いけど、絶対にいるだろう、松岡さんの恋人のことも考えてのことだった。
松岡さんは俺に比べて収入は安定してるし、何より俺みたいにコブ付きじゃないから、彼女の一人や二人いたところで、何の不思議もない。
ま、俺としては若干…いや、かなり寂しさは感じるけどね。
「もしもし、お疲れ様です」
「おう、おめぇーもな。ところで、今日この後一杯どうだ?」
「大丈夫ですよ。もう店閉めたし…。久しぶりにやりますか」
そう言えば暫く松岡さんと飲んでない。
お互い仕事が忙しかった、ってのもあるけど。
「あ、じゃあどうします? 俺、近くまで行きますけど」
待ち合わせの場所を聞いた俺に、松岡さんは「迎えに行く」とだけ言って一方的に電話を切った。
ん?
なんか今日の松岡さん、いつもと違う気がする…のは俺の気のせいか?
若干の違和感を感じながらも、俺はいつも通り、ケーキを二つ…小さな箱に入れた。