第9章 Op.9 Meeting & Boy's talk
「えーレオナ来ないのー?」
王宮内の談話室。
ノアの声が響く。
目の前には平謝りのケイがいた。
「ノア様、本当に申し訳ありません…!」
「いやいいんだけどさー…会えるの楽しみだったのになぁー」
「おいケイ、こいつ多分5分後にはいなくなるぞ」
「えっ!!」
カインの言葉にケイは青ざめてノアを見る。
「カイン人聞きの悪いこと言わないでよー」
「……3分後だね」
「ルイまでひどいなー」
ルイは企画書に目を落としたまま突っ込んだ。
「しかし体調を崩されているとは心配ですね…大丈夫でしょうか」
ジルは憂いを帯びた目でケイに尋ねた。
「あ…はい…連絡はクロードさんからだったのでおそらく大丈夫だとは思うんですが」
その言葉にジルはさっと目の色を変える。
ルイがぴくりと動きを止める。
ジルの隣のレオは「あーあ」と天井を仰いだ。
「ある意味大丈夫じゃないね」
笑い混じりに呟くレオの真意が分からずケイは首をかしげていた。
「あ?レオ、どういう意味だ」
鈍感なカインだけが空気の読めない質問をする。
「ねーやっぱ俺眠いから帰っていいー?」
さらに空気の読めないノアの声が上がる。
「と、とりあえず『夏の音楽祭』の件あらかた決めたいので!決まるまではご協力下さい!!」
マイペースすぎる王宮の面々に飲まれそうになりながらケイが必死に訴えた。
咳払いをひとつして、ケイが始める。
「…まず、皆様得意であらせられる楽器をそれぞれジル様に事前に情報として頂いています。
それを加味したうえで、こちらからいくつかの編成をご提案させて頂きたいと思います。
資料の3ページをご覧ください」
王宮の面々は渡された資料をめくっていく。
「…あ?んだよこれ」
一番最初に口を開いたのはカインだった。
「俺は楽器はできねーぞ?なんだこの情報は」
「趣味でなさっていてかなりの腕だとプリンセスから聞き及んでいますが」
ジルが淡々と答えた。
「…あんのおしゃべりめ」
「すみません…どうしても王宮の皆様の印象は『クラシック』に偏りがちなので、今回少し違う要素を取り入れたいと考えておりこのような形をとらせていただきました」
その資料には
カイン:ドラム、と書かれていた。