第68章 【番外編】二つの憂鬱
「あ、あの、ジェイドさん、飲み過ぎではありませんか?」
夕食が終わり、部屋でワインをまた一杯と飲み干し、ボトルを持った彼女が呆然としていた。
「ルルさん、すみません。
もう一杯と、おつまみを少し…。」
「これで最後にしましょう?」
不安そうな顔をする彼女を少し眺め、そうですね、と手短に返事をした。
野菜のピクルスやナッツ、チーズが乗せられた皿がゆっくりと目の前に置かれる。
「ルルさん、横に…」
「…っ、はい……」
何故か緊張しているルルさんがそわそわしながらゆっくりと私の横に腰かける。
いつも二人で戯れている部屋は、今はキャンドルの光だけで薄暗くぼんやり照らされていた。
久々に再会する我々に対するメイドの悪戯だろうが、その淡い光が、今から徐々に私の目の前から消えそうな恋人のようで、胸を締め付けられる思いだった。
「ルルさん…」
「…っ!」
アルコールの回った頭ではいつもの自分とはまるで違う考え方で、もっと余裕のある行動を取りたかったはずなのに、彼女を子供のように力強く抱き締めていた。
「ど、どうしたんですか…?」
いつもと様子が違う私を心配してか、後頭部を小さな手が撫でてくれる。
「…飲み過ぎてしまいました」
「……知ってます…」
耳元でふふっと笑われたのがくすぐったい。
少し膨らみのある胸元のボタンを外すと、彼女独特の甘くて酸味のある香りがした。
この香りが他人のものになるのかと思うと、空虚な気持ちが一気に私を襲い攻め立てる。
(絶対にそんなことはあってはならない……)
下着を外し、白い肌に点々と薄くなった印にまた重ねて付けていく。
いつもよりそれは丁寧に、強く。
「あっ……ひや…!」
ビクビクと身体がよじれ、甘い声が部屋に反響した。
胸の飾りを口でゆったりと堪能する。