第52章 繋がり
私は漸く目を覚ました。
ジェイドさんが寄り添って寝てくれている。
昔からずっと、とても優しい人だった。
あの1年、そして今、私はとても幸せに暮らしている。
きっとこの方がいるからだ。
あの時、どうやって出逢ったかはわからないけれど、私にとって、大切な人。
「起きましたか?」
「はい。
懐かしい夢を見ました。
ジェイドさんが、小さい私を助けてくれた時の夢でした。」
ジェイドさんは少しだけいつもより読み取れない表情をした。
「全部思い出しましたか?」
「…いいえ、出逢ったときの檻の中と、小さなお部屋で暮らしていた時からお別れした時までです。」
「…懐かしいですね。」
「ジェイドさんは、全部覚えてて、私を本当に迎えに来てくれたんですね…。」
「探すの大変でしたよ。」
向き合ってお互い顔を見合わせる。
「ルルさん、私は1つ、貴女に話さなくてはならないことがあります。」
「…はい。」
なんとなく、覚悟は出来ている。
ジェイドさんは、起き上がって本を一冊持ってきた。
「!」
小さい私が写真で載っている本だ。
「貴女は、私が作りました。」
「…つくる?」
「はい。私は、レプリカという物を研究し、作っていました。
その中で貴女が完成したのです。
珍しい成功例でした。」
本をめくりながらその説明をする。
「この本はここに1冊しかないものですので、ご安心下さい。」
私が作られた時の写真…、檻の中にいた頃の写真…、小さなおうちで暮らしていた頃の写真…。
「この研究は、今は禁忌とされ、もう行われておりません。
私も今ならこの罪悪感が理解できます。
研究所を閉めるとき、大半の失敗作は処分されました。
魔物のように人間に危害を加えたりするからです。
ルルさんも当初はその予定でしたが…、私は作られた時から、貴女に心を奪われておりました。
誰にも見つからないように内密に貴女を逃がし、やがて迎えに行こうとしたのです。
見つからなくて大変でしたが……あの町が崩れる時、任務でたまたま近くにいて、漸く見つけた…。」