第45章 ジェイドさんと旅行3日目
「あ、れ?」
きょろきょろと辺りを見回しても見覚えのあるブロンドが見えない。
どうしようかと先のお店何件かと後ろのお店何件かを覗いたけれど、その姿は見えなかった。
あまり動いてしまっても逆に紛れ込んでしまうだろうし、冷静になるためにも近くのベンチに座った。
見つけたら駆け寄ろう…。
人混みをじっと睨み付け、そこにきらきらした人がいないかを探し続けた。
はらはらしていてもう何分時間が経ったのかもわからない時、ふと先程のショウウィンドウのドレスが外されていくのが見えた。
ああ、誰か買ったのかな、なんてぼんやり思いながらその光景を見ていたが、やがて、急にお腹あたりがひんやりと冷たくなる感触。
イヤな予感、というか、悪寒……。
私は走ってお店に飛び込む。
「ジェイドさん!!!ストップ!!!」
「いいえ、これは私が買いました。」
「ちょ、ちょっと待って下さい!?冷静になりましょう!?」
「私はいつでも冷静です。
すみません、採寸してお直ししたものを送って頂いても宜しいですか?」
と店員さんと打合せしている。
あれよあれよという間に私は数人の店員さんに脱がされて採寸されていく。
「ジェイドさん、落ち着いて考えましょう。
本当に私と結婚したいんですか!?」
「当たり前じゃないですか。」
「…!」
一気に顔が熱くなる。
それは嬉しいのだけれど、私の求めている答と全く違う。
「け、結婚式したいんですか…?」
「当たり前じゃないですか。」
「……ほんとに?」
「本当に。」
完敗だ。
恐縮してしまうとか、遠慮してしまうとか、そんな私の考えなんてとても浅はかでどうでもいいことだった。
(に、違いない…。)
店員さんたちに拍手喝采されながら、私達はそこのお店を出た。
「無理してませんよね?大丈夫ですよね?」
私は未だに色々が信じられなくて見上げて聞く。
「ルルさんは、私ではイヤなのですか?」
「と、とんでもないです。
私にはこの先もジェイドさんしか考えられません…。」
言ってから言ってしまった、という恥ずかしさからくる後悔の気持ちが押し寄せる。
「私もですよ。」
ドレス届くの楽しみですね、と鼻歌まじりでそう言うと、ジェイドさんはいつも私に合わせてくれる歩調を合わせないで先に歩いていった。
私はそれを追い掛けるのに少しだけ走った。