第1章 最終章 始まりの追憶
彼は美しい女性とキスをする。
取り囲む仲間や全ての人々が、暖かく拍手を送る。
赤黒く暗雲垂れ込めた空は一変、眩しい日差しに切り裂かれた。
かつてこの世界の隅々までを蹂躙し、全ての人々、全ての生き物から恐怖の象徴とされていた天帝アルマは、その胸を白銀の剣で貫かれ、玉座の下で亡骸となっていた。
従えたる4人の堕神、10人の配下、7匹の神獣を全て討ち取り、地上よりも空に近いと称される空城ヴァンティグラで今ままさに戦いを終えた。
彼は失った友、犠牲になった人々、消えてしまった街や遺跡を思い、その悲しさに涙を流した。
だが、ここから始まるのだという確かな喜びだけは手放さぬよう、彼は力強く世界を見下ろしていた。