【忍たま乱太郎】~空蝉物語~【兵庫水軍中心トリップ逆ハー】
第2章 忍術学園での邂逅【幼虫編】
航の話「男だから」
「あの、航っ」
朝食後に麻言がそう声を掛けてきた。
心なしかもじもじと少し落ち着かない様子だ。
「おう、どうした?」
「えっと、突然なんだけど今日はずっとお仕事、かな?」
「? 否、俺は昼から非番だけど」
それに、何の予定もなかったはずだ、多分。
「あ、そ、そうなんだ。――あの、もし良かったらちょっとお願いがあって」
麻言の事だから、狙ってはないんだろう。
だが、眉根を下げてそんな上目遣いの可愛い女の子が懇願(こんがん)してくるのを断れる男がいるだろうか?
お願いとやらを聞く前に俺は勿論快く受諾した。
「成程、この辺を耕(たがや)しちまえば良いんだな?」
鍬を片手に俺が尋ねると、
「う、うん……! あの、航本当に良いの? 僕も何か手伝えないかな」
「良いって良いって! 鍬は一本だけなんだろ? だったら、男手使ってさっさとやっちまう方が早いだろっ」
そう言って笑いかけてやると、少し申し訳なさそうに「有難う」と言ってきた。
「しっかし、こんな場所で野菜づくりなんて思い切ったよな。何育てるつもりだ?」
「え~っと、とりあえずじゃがいも、ピーマン、シシトウ、玉ねぎ、ネギを……」
「えっ、ピーマン?」
「うん。もしかして、航ピーマン嫌いなの?」
「あ~……俺じゃなくて網問が、な。と、いうのかあいつ野菜全般苦手だぞ。麻言も毎日飯作ってるんだから、何となく解ってるんじゃねえの」
俺がそういうと、ちょっと苦い顔をして「あ~確かに……」と麻言が呟く。
まあ、網問だけじゃなくて水軍の中にゃあ野菜が苦手って奴は少なくない。
俺はまあ、なんでも頂けるから、その気持ちは解らないけどな。
「じゃあ、次回は網問も食べられそうな野菜で作れるものも選んであげなくちゃあね」
そう言って麻言は笑う。
多分、網問の事考えて笑ってるんだろう。
何故かちょっともやっとした。