第9章 骸×凛として咲く花の如く
~六道 骸~
奏、そう彼女は名前を名乗っていた事を今でも覚えている…いや、忘れられないでいると表現した方が正解なのか。
普段の雰囲気からは想像も出来ない圧倒的戦闘センスや鋭く突き刺す様な殺意。
軽やかに舞う兎の様な綺麗な戦いだった事を瞳を閉じれば明確に思い出せる。
嗚呼、これが世に言う【一目惚れ】と言うのでしょうか…この僕がマフィア風勢に興味を示すなんて…最悪な気分ですよ、本当に。
しかし…、一度欲しいと決めたモノはどんな手を使ってでも奪い去りますよ、たとえ貴女が嫌がろうと僕が心も身体も貰いますから…覚悟して下さい。
上機嫌になったり不機嫌になったり…そんな曖昧な機嫌を楽しく思えたのか口元を緩めて髪をかき上げた。
「クフフフフ…」
「…何を笑っているのです? 本当に不可思議な御方ですね、貴方は」
そう微笑む貴女、奏は僕に向けて手を差し伸べる、細く長い指が僕の指と絡まり、温かさが伝わる。
嗚呼…心地の良い温かさ、貴女の全てが愛しくて堪らなくなる、いきなり抱き締めたりしたら…どんな表情をするだろうか?
何時も通りに余裕そうに微笑むのか、それとも恥ずかしがるのか、怒るのか。
試してみるのも楽しそうですね…奏。
~EИD~