第1章 劣情の視線
「え、み、水戸?」
「あれ?葉月さん?」
笑顔で近づいてくる彼は高校時代、やんちゃしてた俺をぼこぼこにしたあげく何を血迷ったのか無理矢理キスして去っていった悪魔かつ頭のイカれた野郎
俺の楽しい高校生活に大きな爪痕を残して行った後輩
「あははははっ!悪魔って!あんただって結構殴ってくれたでしょ、あの後3日くらい瞼のアザ治らなかったんだよ?」
俺は右腕持っていかれたけどな
目の前にあるコーラをズズッと吸う
なんでこいつとマックでまったり昔話なんかしてるんだろうか
こいつと殴り合いはしたが、漫画でよくあるその後仲良くなりました、なんて展開はまったくない
こいつもなんでこんなに楽しそうなんだろうか
「葉月さん、もしかして、右腕やっちゃったの、根に持ってる?」
「あ?もう2年も前の話じゃねぇか、んなもん忘れてたよ」
そんなことより俺とお前はあの喧嘩以来一度も話してないし、それ以前に話したこともない
ただ俺のダチが気に入らないってだけでこの野郎に突っ込んだ喧嘩のとばっちりを受けた
それだけの関係
「いや、俺とお前そんなに仲良かったっけ?」
「・・・あー、すんません・・・久しぶりに会えて、テンションあがっちゃいました」
ちょっと照れながら頬をかく水戸
「いや、別に良いんだけど」
こいつこんなやつだっけ?
ってか、え?
「・・・えーっと、水戸さー、俺と会えて嬉しかったの?」
「そんなストレートに聞かないでくださいよ・・・」
「ストレートも何も、お前とあまり話した記憶が無いんだけど・・・」
「いや、すんません。なんていうか
え、と、あの時さ、喧嘩した時。
すげぇ興奮したんだよね。」
「は?」
「あんたの歪んだ顔に、すげぇ興奮したのよ」
「はぁ?!」
えーと、何言ってんだこいつ。
やはりかなりイカれてんな。
かるく口元を歪ませて次の言葉が出ない俺に水戸は視線を落としたまま
やはりイカれた内容を話し続ける。