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消えた水曜日

第2章 ひと言の勇気 _中篇_




「おはよう。」

張り付いた笑顔で
ずいぶん流暢になった手話を
見えやすいよう大げさにする。



「おはようございます!」



ココにいる子たちも聴力障害は
生まれつきのものではなく
ある日突然、聞こえなくなった。
そんな状態の子ばかりだ。

だから、言葉は話せる。



「今日の授業は____。」



聞こえないというけど
多少は聞こえるものはある。
ただ、言葉としては聞き取ることは
難しい。



「先生。」



「…、どうした?」


HRが終わった後
生徒の一人が教卓にやってくる。



「前みたいに、
 映画とか見ないの?」



時が止まったみたいに
俺は固まった。



〝先生の意地悪。〟



何処からか
懐かしい声が聞こえる。
その声から逃げるように
一度、固く目を瞑った。



「もう少し待ってね。」



そう手話で伝えると
少し悲しそうな顔をして
元気よく返事をし戻って行った。




「映画なんか見たって
 どうせ、楽しくないだろ。」



あの時だってそうだ。


考えたら考えるほど
マイナスな方へと思考が働く。




「先輩、顔曇ってますよ。」



廊下に出ると
ちょうど同じタイミングで
隣の教室から竹内が出てきて
俺の肩を叩いた。




「そうか?」


「はい、かなり。」



俺は頬を叩いて
大きなため息をついた。



「先輩。
 疲れてるのはわかりますけど
 生徒の前でそんな顔しちゃダメですよ。」



「…なんで?」



「先輩、忘れちゃったんですか?
 これは、
 自分で気づくべきことですよ。」



竹内は
いつもとは違う
真剣な表情を浮かべていた。
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