第5章 ♯4
その少女に俺は、どう映っただろうか。
地下には似合わないあの笑顔が、脳裏に焼き付いて消えない。
・・・・。
単純にあの小さい生き物が可愛いと思った。
顔見知りのじじぃの手を嬉しそうに握り、無邪気に喜んでいる世間知らずのクソガキを
守ってやらなくては、と思った。
感情が動くことのない俺が。
疑いを知らないその手を、汚らわしい俺のそれで触れてはいけないと思った。
一目見たくて、何度かあいつの家の近くまで行った。
あいつは俺が見てるなんて露知らず、
純真に、美しくなっていった。
その度に、住む世界が違うのだと痛感させられた。
あいつが俺だけに微笑んでくれたら。
俺の腕の中にいたら。
どんなに幸せか。
愛されて大切に育てられたは、もう俺を覚えていないだろう。