第11章 【元治二年 二月】組織の秘密と優しい嘘
幾度か角度を変えながら、何の抵抗もしてこない夢主(姉)ちゃんに激しく口づける。
たまに漏れる夢主(姉)ちゃんの少し苦しそうな吐息に、一層欲が掻き立てられた。
抱えたままだった夢主(姉)ちゃんを、唇を離さずにそのまま布団に組み敷く。
「……」
相変わらず無抵抗な夢主(姉)ちゃんに戸惑いながらも、唇を離したばかりの近い距離で、その姿を見下ろせば、
「私多分山南さんが好きなんですけど…。」
なんて…この状況には全く似つかわしくない能天気な声が聞こえてきた。
「…うん」
とりあえずな相槌をうちつつ、頬をぺろりと一つ舐めれば、ぴくりと夢主(姉)ちゃんの身体が反応する。
「でも…死んじゃったみたい。」
「…うん」
次は首筋に唇を。
「…このまま流されてもいい?」
首筋に触れていただけの唇を、そのまま這わせるように動かす。
「…聞いてます?」
相槌も打たずに胸元まで唇を這わせれば、びくりと背を反らせながらも夢主(姉)ちゃんは何か言ってる。
「うるさいなあ」
この後に及んで能天気な夢主(姉)ちゃんに苛立って、噛みつくように唇を塞いだ。
「今から夢主(姉)ちゃんは、山南さんを失って悲しんでる事をいい事に僕にやられちゃうんだよ。」
さっきの激しくした口付けのせいで、少し目元が潤んだままの夢主(姉)ちゃんを、そう言って冷たく見下ろす。
夢主(姉)ちゃんの意思で流されてくれたとしても、どうせ僕に心なんて無いんだからさ…。
だったら…今の悲しみは僕にやられちゃった悲しみとか憎しみとかにすり替えちゃえばいいよ。
「…悪いけど…叫んでもやめてあげないから」
怖がって抵抗されたって構わない。
むしろその方が好都合かもね。
僕の中にある冷たい部分を前面に出して、夢主(姉)ちゃんを見下ろせば、夢主(姉)ちゃんは何故か笑った。
「沖田さんて優しいなぁ…」
心臓がどくんとひとつ鳴って、胸のあたりから何かがこみ上げる。
「…僕は屯所で一番優しいって前に言ったはずだけど?」
見下ろす夢主(姉)ちゃんは僕の布団に背をつけて、僕の腕の中で少し着物が乱れてる。
そのまま僕の膝を夢主(姉)ちゃんの両足の間に滑り込ませて、袂に手をかけた。