第10章 1865年 元治二年
めまぐるしい毎日を過ごしていて、新選組の屯所に居たことが、まだほんの2ヵ月くらい前なはずなのに、ずっと昔に思えた。
男所帯に住むのはそれなりに大変だったけれど、やっぱり男の人は女の子にはなんだかんだ優しいから…ああ私は甘やかされてたな…なんて実感する。
女だけの生活は、正直厳しい。
よく「私って男子の中にいた方が楽だから」って言ってたクラスメイトの発言に、違和感を感じたけれど言い返せなかったことを思い出して、少し笑みがこぼれた。
今なら全力で「そりゃ楽に決まってるじゃん」って説明できちゃうかな。
そんな事を考えながら、元の時代の事を少しだけ考えながら眠りについた。
あれ?ここはどこ?
あの桜は…見たことがあるような…
あれ?夢主(妹)がちっちゃい。
あ、そうか。
これは小さい頃の夢かな。
昔よくこの桜の下でよく遊んだっけ。
引っ越してから忘れてたな…
ん?引っ越し?引っ越しなんてしたっけ?
そんな疑問と一緒に目が覚めた。
目が覚めたら、何の夢を見たか忘れちゃって、なんだかすっきりしない。
起床するには少しだけ早いけど、かまどに火を焚くのが苦手な私には丁度いい時間。
勝手場に行って、お姐さん達と従業員の朝餉の準備をする。
夜が遅かったお姐さんの中には、すぐに食べない人もいるけど、お昼頃に食べて貰えるように沢山用意すると教えられた。
毎日、私より年下の禿と呼ばれる見習いちゃん達と一緒に支度をする。
完全に私が下っ端なはずだけど、年が上なのもあって、最近やっと頼ってもらえるようになってきた。
新選組の屯所で千鶴ちゃんに一通り叩きこんでもらって本当に良かった。
千鶴ちゃん元気かな…ほんわりと笑う千鶴ちゃんと、元気な夢主(妹)の姿を思い出しながら、千鶴ちゃん直伝のお味噌汁を作りはじめる。
朝餉の支度が終われば、洗濯と掃除…全部済んだらお稽古へ。
夜はお姐さんのお供で揚屋へ。
就寝時間は3時間あるかないかくらいだけど、新選組での忍者部活動に慣れていたから今の所大丈夫。
人生に無駄は無いなぁ…なんていつだったか、校長先生あたりが言ってたな…。
切り終えた大根の葉をお鍋に入れながら、しみじみと思い出した。