第4章 プレゼント
(そういえば…)
アヤセはワインの袋や
それに結ばれていたリボンを見て気づく。
「シド…私オムライス作りに夢中で、
プレゼント何も用意してなかった。
ごめんね。」
「あ?んなもんいらねぇよ。」
(シドならそう言うと
思ってはいたけど…)
「でもせっかくの誕生日なのに…」
「そ。
じゃあお前、ちょっとじっとしてろ。」
「え?」
シドはそう言うと
アヤセの隣に立ち、
片方のサイドの髪を一房取った。
「髪伸びたな。」
「あ、うん。伸ばしてるの。」
ウィスタリアに来たばかりの頃は
ミディアムボブぐらいの
長さだった髪は、
胸の辺りまで伸びていた。
パーマをしているせいか、
柔らかそうにフワフワと揺れる。
「プリンセスの肖像画、あるでしょ?
100年前の。
あのプリンセス、
髪がとてもきれいに描かれていて、
憧れてたんだ。」
「形から入ろうって?」
「そ、そういう訳じゃなけど…
そうなのかな…?」
シドはフッと笑うと
「んなことねぇよ。」
と呟くように言った。
(…からかわれるかと思ったのに、
なんかいつもより優しいな…)
そんなことを話しているうちに、
シドはちょっとした
みつ編みを編んで、
先っぽをワインに結ばれていた
濃紺のリボンで結んだ。
そしてシドは再びイスに座った。