第7章 忍足先輩とキャプテン
忍足先輩とも時々外のクラブで打ってるらしいから、相当上手い。でも選手より、忍足先輩のテニスを傍で見ていたいんだそうだ。
景吾に教えてもらってから、私もだいぶテニスが上達したけど、女テニには入らない。
やるからには負けたくないけど、それ以上に景吾の傍にいたかった。
風上からレモンとグレープフルーツが混ざったような柑橘系の香りがする。
「あ、ごめんね、顔に当たった?」
「いいえ、大丈夫です。先輩らしい香りですね」
キャプテンの頬が紅潮する。めずらしい。
「あっ…うん…ありがとう」
「忍足先輩にもらったんですか?」
耳まで真っ赤になって、まるで同級生になったみたいにかわいい。
「…侑士と、おそろいなの」
「うわ、良いですねそれ、素敵」
「秘密にしていると、あんまり公にお揃いのものとか持てないから、ね」
困ったようなキャプテンの笑顔がとても可愛い。
部活中はキリっとしている分、別人の様だ。忍足先輩もこのギャップにやられちゃったのかな。
「顔」
「え?」
「にやけてるわよ」
「あはは…」
不思議だ。眼鏡をかけていると全部顔に出てしまう。
「野薔薇がいないと仕事が溜まって仕方ないから、元気になってくれてうれしいわ」
頭をぽん、とされて、「今日からまたがんばります!」と大きく返事をした。
「じゃあまた、放課後にね」
「はい、お疲れ様です」
あんな風にかっこいい人になりたいな。