第12章 長太郎と
ぼんやり野薔薇を眺めると、抱えられたまま跡部さんにキスをした。
やっぱり二人は綺麗だ。
青く見えるほど綺麗な黒髪がさらりと揺れる。
長いまつ毛を濡らした野薔薇が不敵に笑う跡部さんを見つめる。
不思議と悔しいとか、悲しいとかはなくて、ただ眺めていると野薔薇がこちらを見た。
「…」
少しだけあいた唇が何か言おうとしている。
黙って見ていると野薔薇は日吉に視線を移した。
「私、長太郎のことも、若のことも、すごく大切。でも、それ以上に景吾を愛してるの」
あいしてるの
中学生が使うにしては言葉が重い。でも、きっと本音だ。
微笑む顔に見惚れて、脳が言葉を理解することを拒否するみたいにそれ以上考えられなかった。
でも、抱いた感覚はまだまだ身体に色濃く残っていて、熱い。
野薔薇が、慣れた手付きで跡部さんのシャツのボタンを外していく。
跡部さんもされるがままに、足を投げ出したまま、ボタンを外す野薔薇の髪を撫でている。
一番下のボタンを外したところで跡部さんが身体を反転させ野薔薇をベッドに組み敷いた。
目の前で起きている光景に見惚れていると跡部さんと目が合った。
日吉は俺より先に跡部さんの意図を理解したのか傍にきて野薔薇の足元に腰掛けた。
足先をそっと手に取る。
日吉の腕は白くて綺麗だけど、野薔薇の足はもっと白くて細い。
本当にお人形みたいだ。
俺も振り返り、投げ出された手の指先を見た。持ち上げてキスを落とすと野薔薇が小さく息を吐いた。