第4章 天野平
「一番 天野平(アマノタイラ)、中学は東一中です」
少し小柄な男子が立ち上がり、自己紹介を始めた。
「バスケが好きで、そこにいる万里とかとよくやります。えーと、あ、名前はタイラだけど、平(へー)って呼んで下さい!よろしくー!」
(日下くんの友達か。元気な子だなぁ)
少し小柄なだけなはずなのに、笑ってクラスメイトたちに手を振る姿はかなり小さく見える。
(ていうか、二頭身サイズ?)
思わず瞬きをしたが、自己紹介を終えて席についた平はいたって普通だった。
(・・・気のせいか)
苦笑した真依の鼻を、少し癖のある甘い香りがかすめた。
「平が小さく見えた?」
万里の顔が耳元に寄せられていた。
目線を向けると、少し色素の薄い瞳と視線が絡んだ。
「・・・男の子には失礼かもしれないけど、可愛いらしい印象ね」
にっこりと笑いかけ、教室に目線を戻した。
(日下くんは、良く言えば人懐こい、悪く言えば軽薄そう、てとこね)
暫く目線を感じていたが、気がつかないふりをして級友たちの自己紹介を聞いていると、目線から解放された。
少し笑ったのを、空気で感じる。
(勉強ができるだけの頭がいいじゃないわね。ちょっとめんどくさいかも)
順番に進む自己紹介を聞きながら、これからの日々に思いを馳せた。