第1章 プロローグ
少年はそう言い放つと
乱暴にアナウンサーにマイクを返した。
そして、唖然としている
人ごみを掻き分け、
走り出す。
私は慌ててその少年の背中を追いかけた。
『お兄ちゃん!!!!』
私のその声に
その少年は足を止めた。
振り返り、追いついた私の頭を優しく撫でた。
「紅葉。僕はお前が羨ましいよ。何にも囚われず、自由に生きられるお前が。…頼む、僕を…自由にしてくれ。」
少年はそういうと
ほんの少しだけ寂しそうに笑い、
また私に背を向けて走り始めた。
それ以降、
その少年の姿を見たものは
誰一人としていなかった。