第8章 プレゼント
大野side
短い間だったけど、俺達の愛の巣だった部屋を二人でぼけっと眺めてた。
まだ僅かに残る荷物は、家族が後から来て処分してくれる。
ここには寝具と、明日持っていく荷物だけが残っている。
本当はホテルに泊まろうと思ってたけど、やっぱり思い出がたくさんあるここで最後の夜を迎えようということになった。
床に直に敷いた布団に座りながら壁に凭れている。
そっと潤の手を握りしめて、左手の薬指に光るリングに唇をつける。
「楽しみだね、ニューヨーク」
「ああ…今までは出張でしか行ったことないからな…」
「住むとなると、また違う街に見えるんだろうね」
「そうだな」
「それに…智と一緒だし」
そう言って潤は俺の肩にこてんと頭を載せた。
その頭に俺もこてんと頭をくっつけた。
「智と一緒なら、俺、無人島でも楽しい気がする」
「そうだな。潤と一緒ならどこだって楽しい」
「えへ…」
嬉しそうに俺の薬指に光るリングを撫でた。
「…ずっと、そばに居てね…」
「ああ。潤も、離れるなよ」
「うん。離れない」
潤は頭を離すと俺を見つめた。
「智と、出会えてよかった。俺、すっごい幸せだ」
「うん…」
よかった。
潤が幸せなら、なんだっていい。
それだけで、俺もしあわせだから。
「俺も…しあわせ…むにゃ…」
「智…?もう、寝るなら布団かぶろうね?」
潤の声を遠くに聞きながら、俺は眠りに引き込まれていった。
潤…愛してる。
ニューヨークで、俺たちしあわせになろうな。
「おやすみ…智…」
額に、潤のやわらかい唇が触れていった。
おやすみ…潤…
明日から、俺達のネクストステージが始まる。
一緒に…歩いて行こうな。
【END】