第14章 旅の終わり。
退出時間30分前。
最後にシャワーを浴び、服を着て、
私達は日常に戻る。
「準備できた?」
「そろそろ出ようか。」
こくり、頷き前に進もうとするけれど
足が、進まない。
2人の顔がゆがんで見えない。
『やだ…いやだ…出たくない…』
駄々をこねてもその時はやってくる。
頭ではわかっているけれど心がついていかない。
ぼろぼろと溢れる涙を月島くんは指で掬う。
リエーフくんは唇で舐めとる。
「俺だって出たくない。でも出なきゃ。」
そう言うリエーフくん。
月島くんは何も言わないけれど寂しそうな顔。
『最後……ぎゅってして?』
言うか言わないか。
どさり、荷物が床に落ちる音。
ふわり、香る。
同じシャンプーのかおり。
「……っ…」
抱きしめられてる。
月島くん…
蛍に…
びっくりするくらい強く抱きしめられ、私の涙が止まる。
大事なことは言葉にしないくせに…
本当に素直じゃないんだから…
私も月島くんの背中に手を伸ばしぎゅっと抱きしめる。
『蛍、大好きよ?』
気持ちを伝え合わせるように月島くんと抱き合っているとその上からがばりとリエーフくんに包み込まれる。
「俺も!」
ぎゅうぎゅうと3人で抱き合っているこの状況がなんだかおかしくて私は吹き出してしまう。
それを見た2人もつられて笑った。
もやもやと苦しかった気持ちが晴れていく。
『2人とも、大好き。』
2人にあてた最後の告白。
涙を拭いて、笑顔に表情を変えて2人から離れる。
『お腹すいたね?ご飯食べて帰ろうか?』
そう言えばリエーフくんはにかりと、月島くんはくすりと笑う。
荷物を持ち直すと、私達3人はドアの向こうに歩き出した。