第9章 夜空の下で
空にはまばゆい星たちが瞬いている
その空の下で、俺や天体マニアの人たちが集まっている
高価そうな望遠鏡を組み立てているやつもいた
残念ながら俺は安物なんだよな…
せっかくのチャンスだから鮮明に見れるものが良かったけれど、ただの学生には辛い出費になってしまう
俺はそっとため息をついた。
と、その時
「見えたぞ!」
暗いのでどこにいるのかはっきりとはわからないが、近くで男が叫んだ
周りでどよめきが起こり、いっせいに望遠鏡をのぞきこむ。俺もその中の一人だった
……銀河。
ふいに名前を呼ばれた気がした。思わず俺は振り返る
「アリス!」
どういうことだろう。突然彼女が少し離れた場所に立っていた
これは、普通のことではない
アリスは出会った頃のままの姿だった
何ひとつ変わっていない
「流れ星だ!」
家族連れだろうか、どこからか女の子の声がした
流れ星が見えた瞬間、アリスは走り出した
「おい、アリス!待てよ…‼」
俺は慌てて追いかける
彼女は俺の名前を呼んだ時以外無言だった
ただひたすらに走る
ただの中学生の走りではない。大学生の俺が追い付けない速さだった。
彼女の頭上には流れ星がある。
一瞬、彼女を追っているのか、星を追っているのか訳がわからなくなる
そして彼女との距離は徐々に離れていった