第6章 突然の
「ほんとに、アリス何かあったのか⁉」
目の前で女子が泣く、という経験が今まで無かった俺は、あのときはものすごく動揺した
「あのね…。私っ…!前にいた所に戻ることになったの。」
「ええっ⁉そんな…。急すぎる…。何で」
「それは言えない。ごめん。」
人にはそれぞれ事情がある。言いたくないことを無理に言わせてはいけない。
俺は尋ねたくなる衝動をグッと抑えた
「いつ…」
「?」
「いつここを離れるの。」
せめて見送りだけでもしたい。俺はそう思った
「…明日」
「っ…。何でもっと早く言ってくれなかったの」
思わず責めるような口ぶりになり、自分はなんて器の小さい者だ、と後悔した覚えがある
「急に決まったから…」
「いつか…いつかまた会える?」
俺が尋ねるたびにアリスの眉は下がっていった
「もう、今日で最後だよ…」
俺は心臓がぎゅうぎゅうと締め付けられている感覚におそわれて、気分が悪かった
「でも…。ものすごく遠い場所からだけど、ずっと銀河を見守れる場所だから…。一緒に遊ぶことはできなくても、私はどこかにいるから…っ!
私のこと、覚えていてくれたら、うれしい」
「絶対忘れない。このたった2週間の短い間だったけど、すごく楽しかった。忘れるなんて無理だよ」
俺の言葉にアリスは今までで1番綺麗な笑顔を見せた。
目だけは、涙が溢れていたけれど
そのとき、彼女の後ろに見える空から、流れ星が一筋の光りとなって通りすぎた
次から次へと光の筋が黒い空を彩っていく
「綺麗…。」
アリスが呟いた
「そうだな」
俺は一生星が降り続ければいいのに、と願っていた
夜が明けずに、星が降り続いていたら、彼女がいなくなる明日は来ないのに
悲しい思いで空を見上げていた