第5章 約束のあの日
そして二人で約束していた日がやって来た。
夕方、星がではじめる少し暗くなった頃に、俺達は初めて会った時の場所に落ち合った
母さんは放任主義だったから、俺は夜に星を観察しに行く、と言っても何もとがめられなかった
アリスは大丈夫だったんだろうか、と待ち合わせの時刻を過ぎてもなかなかやってこない彼女を心配した
「ごめん、銀河。ちょっと遅れた」
アリスがそういいながら現れたのは約束していた時刻よりも15分程後だった
「良かった、親に許してもらえなかったのかと思ってたんだ」
「んー。それは大丈夫なんだけどね」
俺達は秘密基地に向かって歩きだした
虫の音や、近くの川から聞こえる水音、俺達が踏みわける草の音。それらがやたらにはっきりと耳に届いた
珍しく彼女は静かだった。いつもなら、周りにある草木について質問したり、動物の話をしたりと、楽しそうに表情をくるくると変えながら俺と歩いていたのに
秘密基地の木に最初に俺が登り、俺は後から登ってくるアリスに手を差しのべた
「ありがとう」
やっと彼女は笑顔になった
二人で黙って空を見上げていたけれど、まだ時間ではなかったのか、星たちは季節外れのイルミネーションのように瞬いていた
流石にただ黙って座っているのが辛くなってきた俺は彼女に尋ねた
「何かあったの?やけに元気が無さそうだけど」
俺の問いに彼女は顔をあげる
その目には涙がたまっていた