第11章 儚きものが散りゆくは。
それは不二先輩もなのか、いつもより言葉は少なくて。
ときどき、俺の方をチラリと見ている。
そしてその度、ふわりと微笑むから。
なんだか俺は変な気分になる。
不二先輩の家の前。
中に入るのは、不二先輩が体調を崩した日以来だ。
「お邪魔します」
「今日は、まだ母さん仕事から帰ってきてないから。そんなにかしこまらなくても大丈夫だよ」
先に部屋に行ってて、と言われて俺はうろ覚えながらも先輩の部屋にたどり着いた。
窓から西日が差し込んで、ドアを黄色く染める。
「お待たせ。オレンジジュースで良かったよね?」
「あ……」
ドアが開いて、不二先輩に柔らかな光が当たった。
ただそれだけのことなのに。
「海堂?」
言葉が出ない俺を不思議に思ってか、不二先輩は首を傾げて俺の名前を呼ぶ。
「…あ…いえ」
あんまりその姿が綺麗で。
色素の薄い髪の毛がさらさらと光にあたって輝くから。
俺の心臓がまた、ドッドッドッとうるさくなり始めた。