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【庭球・BL・海不二】黄昏に映える人

第5章 追いかける。


 青学テニス部恒例、ランキング戦。
 一年はまだランキング戦に参加できない。
 上級生の姿を見ているだけで、もどかしい。
 早く。早く、あのコートに立ちたい。
 そして、彼らと対等に打ち合いたい。

「やっぱり先輩たち、すげぇよな…」
「…今更なに言ってんだ」

 あっさりとそう返事をしたはいいが、実際には俺も、桃城と同様先輩たちの凄さに驚いていた。
 本当に、この手が…あのコートに、届くのだろうか。
 まだまだ弱い自分が嫌だった。
 どうすれば、もっと早く強くなれる?
 あの場所に立てないことを悔しく思う。
 俺はボールカゴを持ったまま、コート内を見つめる。
 はたから見れば、睨みつけているようにしか見えないのだろうけれど。
 そうしていると、丁度試合の終わった不二先輩がフェンス越しにこちらを見た。

「退屈そうだね」

 ふふ、と笑って汗を拭く彼。
 無言で目を逸らすと、不二先輩はまた口を開いた。

「僕の試合、見てくれた?」

 言われて、俺は視線を戻して頷いた。
 不二先輩の試合を、見ないわけがない。
 目を逸らすことなど、できないようなゲームメイク。
 ギリギリのところまで相手を有利にさせ、そこから瞬殺するというカウンター的な試合。
 相手をあざ笑うかのごとく、華麗な試合運び。
 鮮やかなプレイスタイルと同時に、不二先輩自身も綺麗だった。

「本気じゃ、なかったくせに…」

 ぽつりと呟いた俺の言葉に、不二先輩はクスクスと笑った。

「そんなことしたら、つまんないじゃない」

 退屈な試合は、したくないからね…。
 そう言って、コートから出て行く不二先輩。
 どこまでも掴めない人だ。
 3年の先輩までもが、不二先輩には手塚先輩と違った意味で一目置いている。
 得体の知れない何かが、不二先輩にはあるような気がして…。

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